20歳のときに装着感だけで選んだ一台が、26年連れ添ううちに、編集・収録データ確認の「基準機」になっていました。
20歳の時に1本のヘッドホンを買いました。
SONYのMDR-CD780というヘッドホンです。
当時はお金なんてありませんでしたが、いいヘッドホンでたくさんの音楽を大きな音で聴きたい。と
失敗は絶対にしたくなくて、量販店で何本も試して、「フワッフワやんけ!これだったら何時間つけても疲れんわ!」と音質のことなんか何にもわからず、でも私にとってはとても高額で、迷いに迷った挙句、装着感で購入したのがこのヘッドホンでした。
その頃は「モニターヘッドホン」という言葉すら私は知りませんでした。
イヤーパッドが交換できることも
リケーブルができることも知らないまま、音楽でプロになりたくて、がむしゃらに聴いて弾いて。
理由は一つ。それしか持ってなかったからです。
やがて私の道は音楽を作る側から音を録る側へとシフトしていきます。
今ではありがたいことに、映画やテレビ番組の現場で録音を担当したり、レコーディングをするようになりました。
外ロケのモニターはMDR-7506というヘッドホンです。
ひと夏を越えればイヤーパッドを交換するほど酷使する、これはこれで信頼できる仕事道具です。
それでも、自宅での編集作業や収録した音声データの整理・整音や他の方が録音したデータを扱う時などは今も必ずMDR-CD780を使用しています。
モニター用として販売されていたヘッドホンではありません。
手放してもいい機会はこれまでに何度もありました。
もっとクリアに、細部まで聴こえるヘッドホンは今の時代いくらでもあるでしょう。
それでも26年、同じ一台で聴き続けてきたことで、いつの間にか自分の中に「基準」ができていました。
このヘッドホンで聞いた時、どう鳴っていれば正しいのか、どこを補足してあげればいいのか。が体に入っている気がします。
機材は日々進化していきますが、音の仕事の最後の拠り所は自分の耳と、その耳を育ててくれた一台なのだと思います。
20歳の自分が「フワッフワやんけ!」だけで選んだヘッドホンが、26年後の今、映画の音を預かる仕事を静かに支えてくれている。
長く付き合う機材には、カタログには載らない価値がある。
MDR-CD780は私にとってそんな一台です。
| 実績日 | 2026.08.31 |
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| カテゴリー | その他 |
| 担当範囲 | — |